2016年12月06日
三文小説風に
浅間神社前にある馴染みの寿司屋で、八年ぶりに今年五十歳になる旧知の女に偶然会った
女が余りにも老けていたので、彼女が声をかけてくるまで、
失礼だが七十前の老女に見間違えたからだ
伝え聞くに難病で闘病中であることは知っていたが、わずか八年でこうまで老けるのかと唖然とした
まだ陽が高いと云うのに生ビールを昔と変わらずジョッキでうまそうに呑んでいた
おいおい その難病とやらは大丈夫なのかと、こちらの方が心配するほどだ
若く美しかったころの面影は少しあるが、滑舌も悪く、マブタが垂れ、妙に腰が屈んで老けた姿を
見ると、過去の想いと目の前の現実とが複雑に交差してきた
久しぶりなので、お互いの近況を話し合っていた
もう少し込み入った話をしたいと思ったが、その思いとは裏腹に私は腰を浮かし早々に席を立った
彼女を見ているのが辛かったからだ
別れ際に杖をついて歩く私に
「清さんもがんばってね」と優しく声をかけてきた
そういや俺も哀れな姿なんだろうなと内心苦笑いしヨタヨタ歩きながら参道沿いの寿司屋を出て、
店の前に止めてある車に向い、
片麻痺でままにならぬ体を運転席に押し込み、静かに車を走らせた
Posted by マンマドルチェ at 16:20│Comments(0)
│オーディナリー
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